生命の歴史

古生代シルル紀


前の時代であるオルドビス紀の後期には氷河が発達し、寒冷化などが原因で生物の多くが絶滅しました。しかし、シルル紀に入ると地球の温暖化が進み、とくに後期には、暖かくおだやかな気候が広まりました。

シルル紀には魚類がごく普通にみられるようになりました。しかし、多くは「あご」がなく、現在のものとは大きく姿形が異なっていました。ただしシルル紀の終わりには、あごをもつ魚類も出現しています。

それ以前の動物はほとんど海に生息していましたが、魚類やウミサソリの一部は、川や湖、つまり淡水にも進出をはじめました。また、酸素の増加によってオゾン層ができたことにともない、初めて植物が上陸し、昆虫の先祖やウミサソリ、巻き貝なども追うように陸をめざしました。

<シルル紀の動物>


プテリゴトゥス


プテリゴトゥス
学名: Pterygotus
分類: 節足動物門・腿口綱・広翼亜綱
生息年代: シルル紀後期
生息地域: 北アメリカ・ヨーロッパ
大きさ: 全長約2.3m
食性: 肉食
どんな動物?: プテリゴトゥスはサソリやクモ、カブトガニの遠い親戚であるウミサソリ類に属する、史上最大の節足動物です。
大きな複眼で獲物を探し、鋭く強大なハサミで襲ってくる、当時最強の捕食者でした。親類のカブトガニ同様、急ぐときは背泳ぎの姿勢になったと考えられています。
ウミサソリ類は淡水や汽水にも生息していました。さらに、オゾン層ができ上がった次のデボン紀には上陸するものも現れ、陸を歩いた足跡が化石に残されています。

プロケファラスピス


プロケファラスピス
学名: Procephalaspis
名前の意味: 頭のヒレ、以前
分類: 頭甲綱・オステオストラキ目・ケファラスピス科
生息年代: シルル紀後期
生息地域: ヨーロッパ
大きさ: 全長約20cm
食性: 雑食
どんな動物?: 大きな骨質の装甲をもち、その上方に目がありました。あごのない魚の中では進化をきわめたグループに属し、背ビレや尾ビレのほか、胸ビレに似た形のえらぶたなどで、遊泳中もたくみにバランスをとることができました。
顔のまわりや頭のてっぺんには感覚器官が並び、砂の中の小さなえさや、上から襲ってくる敵の存在を知るのに役立ったといわれます。これらはデンキウナギやシビレエイがもつような発電器官だった可能性もあります。

ノストレピス


ノストレピス
学名: Nostolepis
分類: 棘魚綱・クリマティウス目・クリマティウス科
生息年代: シルル紀後期
生息地域: ヨーロッパ
大きさ: 全長約20㎝
食性: 肉食
どんな動物?: 開閉できる顎をもつ魚としては世界最古の種類のひとつです。大きな目で小動物を探し出し、捕食したと考えられています。小さな体にもかかわらず多くのヒレやトゲがついており、現在の魚に比べると不恰好な印象も受けますが、当時は最も速く泳げる魚だったのです。

コノドント


コノドント
学名: Conodonta
名前の意味: 円錐形の歯
分類: コノドント綱?
生息年代: カンブリア紀前期~三畳紀後期
生息地域: 世界中
大きさ: 全長約3㎝
食性: 肉食
どんな動物?: 最も原始的な脊椎動物のひとつで、カンブリア紀初期の地層からも発見されています。大きな眼と、あごのない口にクシのような歯をもち、死がいから肉をえぐったり、小さな動物を捕食したと考えられています。
化石は世界中で発見され、地層から時代を推定するための「示準化石」になっています。しかし、硬い歯だけが残されていたため長い間正体が分からず、1本の歯をひとつの動物として復元してしまったこともあるほどです。

オルトセラス類


オルトセラス類
学名: Orthocerida
名前の意味: まっすぐな角
分類: 軟体動物門・頭足綱・オウムガイ亜綱・オルトセラス目
生息年代: オルドビス紀~三畳紀
生息地域: 世界中
大きさ: 全長数10cm
食性: 肉食
どんな動物?: 現在のオウムガイ類は4種類がいるだけですが、古生代の前半には非常に繁栄しました。オルドビス紀には殻の長さ約6m、体重3tに達するものまで出現し、当時の生態系の頂点に立っていました。
シルル紀のオウムガイはおおむね小型でしたが、オルトセラスのようにまっすぐな殻のものから、巻いた殻のものなど多様性をたもっていました。しかし次のデボン紀になると、オウムガイの一部から派生したアンモナイトにとってかわられていきます。

ファコプス


ファコプス
学名: Phacops
名前の意味: レンズの眼
分類: 節足動物門・三葉虫綱・ファコプス目・ファコプス科
生息年代: オルドビス紀後期~デボン紀後期
生息地域: 世界中
大きさ: 全長4~5㎝
食性: 肉食
どんな動物?: 比較的大きな眼がたくさん集まった複眼をもつ三葉虫です。ファコプスの眼は現在の昆虫などよりはるかに高い解像力をそなえていました。最大の敵、ウミサソリに襲われると砂にもぐるかダンゴムシのように丸くなって身を守ったと考えられており、実際に丸まったまま化石化した標本もたくさん発見されています。