生命の歴史

中生代白亜紀(2)


白亜紀の海はとても暖かく、海水の表面温度が現在の同じ緯度より8℃も高いところもありました。

白亜紀後期の初めに大西洋が大きく広がり、南氷洋などの新しい海洋も誕生しました。日本でも、東北地方から北海道、ベーリング海にかけての暖かく浅い大陸棚には、首長竜や海トカゲ竜、ウミガメ、海鳥などが栄えました。

この時代には硬骨魚類が勢力をもつようになり、ヤドカリが進化しました。アンモナイトも多様化をきわめ、さまざまな形や大きさのものが、深さや水温の好みなどに応じて棲み分けていました。


<白亜紀の海の動物>


モササウルス


モササウルス
学名: Mosasaurus
名前の意味: ムーズ川(オランダにある産地近くの川)のトカゲ
分類: 有鱗目・トカゲ亜目・モササウルス科
生息年代: 白亜紀後期
生息地域: ヨーロッパと北アメリカの各地
大きさ: 全長約8m
食性: 肉食
どんな動物?: 最後に出現した海生爬虫類のひとつで、現在生きているオオトカゲに近い動物が水中生活に適応したものです。海トカゲ竜とよばれるこのグループはどう猛な肉食動物で、仲間同士の争いで傷を負った化石も発見されています。
モササウルスに何度も噛まれたあとのあるアンモナイトも発見されており、これを食べたことは確かです。ただし、歯形をよく調べると肉食性の貝によって付けられたものも混じっており、どちらかといえばイカや魚を主食にしていたようです。体は細長く、沿岸をウナギのように左右にくねらせて泳いだと考えられます。

エラスモサウルス


エラスモサウルス
学名: Elasmosaurus
名前の意味: 薄い皿のようなトカゲ
分類: 鰭竜目・エラスモサウルス科
生息年代: 白亜紀後期
生息地域: アメリカ
大きさ: 全長約13m
食性: 肉食
どんな動物?: 首長竜(長頸竜)の中でも特に長い首のもち主で、その長さは体全体の半分以上にも達しました。
首は最大76個もの骨から成り立っており、特に横方向には自在に動かすことができ、イカやタコなどの頭足類や魚をたくみに捕らえたと考えられます。まるで食虫植物ハエトリソウのような口と歯で、ヌルヌルして捉えどころのない獲物もすばやく捕ることができたでしょう。

アーケロン


アーケロン
学名: Archelon
名前の意味: 古代のカメ
分類: カメ目・潜頸亜目・プロトステガ科
生息年代: 白亜紀後期
生息地域: 北アメリカ
大きさ: 全長約4.5m
食性: 雑食
どんな動物?: 巨大な海ガメで、クラゲを主食にしており、魚や海藻などのほか、アンモナイトも食べたと考えられています。
甲にはたくさんの隙き間があるなど、巨大な体の割には軽量化がはかられており、体重は約2tほどでした。首長竜などの他の海生爬虫類はみな胎生でしたが、カメであるアーケロンは陸で産卵する必要がありました。そのため、これ以上巨大化し体を重くすることはできなかったのです。

ヘスペロルニス


ヘスペロルニス
学名: Hesperornis
名前の意味: たそがれの鳥
分類: 鳥綱・新鳥亜綱・へスペロルニス目・へスペロルニス科
生息年代: 白亜紀後期
生息地域: 北アメリカ
大きさ: 全長約1.8m
食性: 肉食
どんな動物?: 翼がほとんど退化して飛べない鳥類で、クチバシには始祖鳥のように鋭い歯をそなえていました。たくみに潜水して、魚やイカ、小型のアンモナイトなどを捕食したと考えられています。当時北極圏内にあったカナダの最北端から化石が出ており、比較的冷たい水域でも活動できたようです。
海に適応した恐竜はひとつも発見されていませんが、限りなく恐竜に近縁なヘスペロルニスこそ、「海の恐竜」といえるかもしれません。

クシファクティヌス


クシファクティヌス
学名: Xyphactinus
分類: 硬骨魚綱・ニシン目・イセゴイ科
生息年代: 白亜紀後期
生息地域: 世界各地
大きさ: 全長約4.2m
食性: 肉食
どんな動物?: ニシン目のオキイワシという現生種に近い魚で、日本でも北海道からほぼ同じものの化石が発見されています。
大変どう猛で貧欲な魚で、鋭い歯でさまざまな動物を襲いました。体長1.8mもある肉食魚を襲い、丸のみにしたものの無理がたたって死んだ化石もいくつか発見されているほどです。群れて行動した可能性もあり、当時は最も恐れられた海のギャングだったかもしれません。

パキデスモセラス


パキデスモセラス
学名: Pachydesmoceras
名前の意味: 分厚く結束した角
分類: 軟体動物門・頭足綱・アンモナイト亜綱・デスモセラス科
生息年代: 白亜紀前期~後期
生息地域: 世界各地
大きさ: 直径最大1.2m
食性: 肉食
どんな動物?: 当時日本近海に分布していたアンモナイトでは最大級です。
殻の形はさまざまでした。暖かい水温に適応している一方、海の深場を好んだようです。このふたつの事実は矛盾するようですが、水温の低い時代には浅いところに、水温の高い時代には深いところに分布を変えたと推定すれば納得がいきます。
アンモナイトはイカやタコの親類で、同じように触腕で獲物を捕らえ、鋭いクチバシ(カラストンビ)を使って噛みくだきました。

ニッポニテス


ニッポニテス
学名: Nipponites
名前の意味: 日本の石
分類: 軟体動物門・頭足綱・アンモナイト亜綱・ノストセラス科
生息年代: 白亜紀後期
生息地域: 日本近海
大きさ: 直径約10㎝
食性: 肉食
どんな動物?: おもに北海道で発見され、「異常巻きアンモナイト」の代表例として世界的に有名です。
かつて種族の絶滅を暗示させるものといわれましたが、現在では環境にうまく適応した結果として理解されています。しかし、殻に対して体が小さすぎ、形も左右非対称なため、泳ぎまわって獲物を捕らえるのは難しそうです。
ホタルイカのように発光して餌のプランクトンをおびき寄せたのかもしれません。

バキュリテス


バキュリテス
学名: Baculites
名前の意味: 棒状の石
分類: 軟体動物門・頭足綱・アンモナイト亜綱・バキュリテス科
生息年代: 白亜紀後期
生息地域: 世界各地
大きさ: 全長10~20㎝
食性: 肉食
どんな動物?: 真っ直ぐな殻をもつアンモナイトです。その表面はなめらかで、水の抵抗を受けにくい形でした。そのため、現在のヤリイカのように高速で泳ぐことができたと考えられます。
殻の先端にはガスが詰まっており軽いため、普段リラックスしているときは殻を斜めに立てていたと考えられます。