LATEST NEWS

はやぶさ2最新情報

2021.3.21

リュウグウ試料のキュレーション作業

左:サンプルキャッチャーA室の試料 右:サンプルキャッチャーC室の試料 ©JAXA

JAXAではリュウグウ試料のキュレーション作業が進んでいます。
キュレーション作業というのは、リュウグウ試料の1粒1粒について高精細な光学顕微鏡写真を撮影し、重量を測定し、リスト化する作業です。
現在は、第1回目のタッチダウンで採取されたサンプルキャッチャーA室の試料に続き、第2回目のタッチダウンで採取されたサンプルキャッチャーC室の試料のキュレーションが進んでいます。
こうした作業はこれからもしばらく続き、6月頃から試料が各研究者に配布され、研究活動が開始されるものとみられます。したがって、リュウグウ試料を分析した科学的成果が発表されはじめるのは、今年の末くらいからでしょう。
第2回目のタッチダウンの際には人工クレーターがつくられ、リュウグウの地下物質が表面にあらわれました。この地下物質を「はやぶさ2」の近赤外分光計(NIRS3)で観測した結果が、今年1月4日に、イギリスのオンライン科学ジャーナルに発表されました。この論文によると、リュウグウの地下物質は表面に比べて水分に富んでいることがわかったそうです。
リュウグウの物質を直接分析することによって、こうした新しい発見が次々ともたらされることを期待したいと思います。

2021.3.20

再突入カプセルの解析が進む

再突入カプセル搭載機器 ©JAXA

JAXAはオーストラリア、ウーメラで回収した再突入カプセルについて解析作業を進めています。これまでの解析で、カプセルの各部品の状態はおおむね良好であることがわかっています。搭載機器については、相模原に戻ってからも正常に機能する状態であることが確認されました。
再突入カプセルには「再突入飛行計測モジュール」が搭載されていました。このモジュールは秒速約12kmもの超高速で大気圏に再突入するカプセルの機体運動とカプセル内9か所の温度を計測するための装置です。再突入飛行計測モジュールは、再突入前後の420秒間、データを取得しました。それによると、再突入カプセルの内部は再突入中から着地まで、常温を大きく超えない程度の温度環境に維持されていました。
こうしたデータの取得は世界でも例が少なく、今後の再突入体の研究開発に活用されます。
前面ヒートシールドは大気圏再突入時に最高3000℃もの高温になりましたが、損傷はありませんでした。背面ヒートシールドには断熱材が部分的に残っていました。現在ヒートシールドの状態について詳細な分析が行われています。

左:前面ヒートシールド 右:背面ヒートシールド ©JAXA

2020.12.15

リュウグウ由来のサンプルを確認

サンプルキャッチャーA室に入っていたリュウグウの粒子 ©JAXA

JAXAは「はやぶさ2」の再突入カプセル内に小惑星リュウグウのサンプルが入っていたと発表しました。
12月6日にオーストラリアのウーメラで回収された「はやぶさ2」の再突入カプセルは、12月8日にJAXAの相模原キャンパスに移送されました。
リュウグウで採取されたサンプルは再突入カプセルのサンプルコンテナ(サンプルを収納する場所)内のサンプルキャッチャーとよばれる部屋に収められています。

サンプルコンテナの開封作業 ©JAXA

12月15日にクリーンルーム内でサンプルコンテナの開封作業が行われました。まず、サンプルコンテナからサンプルキャッチャーを移動したところ、サンプルコンテナの底面にリュウグウの粒子を思われる黒い粒子が確認されました。さらにサンプルキャッチャーA室を開封したところ、直径数mmの粒子をふくむリュウグウのサンプルを確認することができました。サンプルキャッチャーA室には第1回タッチダウンで得られたサンプルが収められています。
「はやぶさ2」ミッションの目的は、小惑星リュウグウのサンプルを地球にもち帰ることでした。今回、リュウグウからのサンプルが確認されたことにより、「はやぶさ2」ミッションがその目的を達成したことになります。
JAXAは今後、第2回タッチダウンで採取した物質が入っているサンプルキャッチャーB室の開封作業も行い、初期分析チームがサンプルの取り出しと分析を行うことにしています。

2020.12.8

「はやぶさ2」のカプセルが地球に帰還

小惑星リュウグウのサンプル(岩石や砂)を収納した「はやぶさ2」の再突入カプセルが無事、地球に戻ってきました。
2019年11月にリュウグウを出発し、地球への旅を続けていた「はやぶさ2」は2020年10月22日には地球から約1700万kmまで接近し、化学エンジンによる軌道微修正(TCM1)を行いました。また11月12日には再び軌道微修正(TCM2)を行い、これによって、「はやぶさ2」は地球を約290kmの距離で通過する軌道に入りました。

オーストラリア、ウーメラ砂漠クーパーペディーで観測された再突入カプセルの火球 ©JAXA

オーストラリア、ウーメラ砂漠クーパーペディーで観測された再突入カプセルの火球 ©JAXA

「はやぶさ2」は11月26日に地球から約360万km離れたところで、再突入カプセルの着陸地であるウーメラ砂漠にむけた軌道変更(TCM3)を行いました。「はやぶさ2」はさらに、12月1日の軌道変更(TCM4)を行った後、12月5日14時30分に再突入カプセルを分離しました。カプセルは12月6日2時29分頃に大気圏に再突入し、地上からは火球が観測されました。
カプセルは高度40kmまで降下すると、高温から収納容器を守っていたヒートシールドを分離し、パラシュートを展開しました。カプセルの位置を知らせるビーコン電波を地上の回収チームが受信したのは2時32分でした。2時54分にビーコン電波は消え、このときカプセルは着地したとみられます。

着地した再突入カプセルとパラシュート ©JAXA

回収された再突入カプセル ©JAXA

ビーコン電波の方向から着地点が推定され、ヘリコプターによる探索でカプセルが発見されたのは4時27分のことでした。6時23分にカプセルの回収作業が開始され、7時32分に作業は完了しました。カプセルに損傷はみられず、7日には現地に設営したクルーンブースでカプセル内のガスが回収されました。
カプセルは8日に日本に到着し、神奈川県相模原市のJAXA宇宙科学研究所の地球外試料キュレーションセンターに搬入されました。

リュウグウのサンプルは今後、日本および海外の科学者によって分析が行われます。 一方、「はやぶさ2」本体はカプセル分離後の12月5日15時30分~18時00分に3回の化学エンジン噴射による地球圏離脱の軌道修正(TCM-5 )を行い、新たな宇宙の旅に出発しました。次の目的地は直径30~40mの小惑星1998 KY26です。1998 KY26到着は2031年の予定です。